☆生物季節観測
気象庁の植物観察
昨日、「サクラ開花と、失われていくものたち」と言う記事を書きました。
そこで、気象庁の職員が各地にある標準木の桜を観察して、開花宣言やら満開宣言が出されると書きました。
このように、気象庁が業務として植物を観察し気候の変化を調べること、これを「生物季節観測」と言います。
昨日の記事にはあえて、「気象庁の目視観測」と書きましたが、正式にはあれを「生物季節観測」と言うんです。
これは私が生まれる10年前(西暦1953年)に始まっていますから、個人的にはとても把握しやすいんです。
私が60歳ですから、この生物季節観測は、始まってから丸71年。
今年で71年目になるんです。
生物季節観測の目的
同じ場所にある特定の植物を長期間観察することで、季節の変化や変動を読み取ることが目的です。
身近な事で言うと、その年の季節の進み具合が分かります。
それで、一番有名なのが桜前線でしょうか。
今年の桜は早いだの遅いだの。
本来は気象変化を調べる科学的なものですが、それが花見のお出かけや商売(商戦など)の目安になっているのが良いですね。
ちなみに観察者は、気象庁のどなたでも良いという訳ではありません。
決められた特定の植物(後述します)に対して、専門知識を持った方限定。
言い換えると、観察者になった方は、その植物のプロにもなると言えるのです。
下の写真は、気象庁が実際に生物季節観測に使っている原簿です。
う、、、。
転載したのは良いんですが、、、これじゃ何が何だか分かりませんね、、、。
反省 m(__)m
写真は、東京の桜の標本木です。
何を観察しているのか?
これには当然、決まりがあります。
その決まりとは、日本全国に広く分布している植物である事。
その上、一般の関心が高い植物である事。
そして生物季節観測開始から令和2年までは、全国の気象台や測候所58地点、ここで観測されていたんですね。
その対象は、植物が34種目。
動物では23種目。
その対象それぞれに、開花や初鳴き等を観測してました。
※これに関する詳細は、以下の気象庁の資料をご覧ください。
< 生 物 季 節 観 測 指 針
ところがこれが、令和3年から変わったんです。
この年から、これまでの観測の多くが廃止され、残ったのは6品目。
理由は環境の変化で、適切な標準木の確保が難しくなってきたことと、動物を見つけづらいということでした。
ただ、細かな観測が出来なくなったことで、私はこの時点で気象庁の生物季節観測の意味はなくなったと感じています。
これはあくまで、私個人の意見ですが。
さて、令和3年からの6品目が何かと申しますと、梅・桜・紫陽花(あじさい)・楓(かえで)・銀杏(いちょう)・薄(すすき)。
この6品目の内、桜には2項目、開花と満開。
楓と銀杏にも各2項目、紅葉(黄葉)と落葉が加わります。
ですので生物季節観測、現在では上記の、6品種9項目が対象となっています。
余談ながら、生物季節観測開始から最初の10年は、生活季節観測と言うのも同時に行われていました。
こちらは、蚊帳や火鉢、夏服・冬服、手袋、水泳、ストーブなどの使用開始日も含まれていたんです。
ところが、人々の生活環境の激変で観測不可、または観測で季節変化を捉えるという意味をなさなくなり、わずか10年で取りやめられています。
いかにこの10年間で日本の生活が急激に変わって行ったのかが分かる、観測終了でありました。
☆観天望気
古くからの日本人がやってきた、天気予報の形
昨日、観天望気について少し書きましたが、改めてもう少しだけ詳しく書いておきます。
今の時代は先ほど申しましたように、気象庁が近代的な観測機器を使って気圧だの湿度だのを計って予測していますが、昔はそんなものは無かった。
なので、雲の様子や風の方向、肌で感じる湿度変化や、動物たちの行動、そして植物の変化などを通して、天気を読んでいたんですね。
それが観天望気。
この観天望気を、それぞれの漢字で読み解くと、単なる天気予報では無いことが分かります。
「観」
見ることですが、この文字を使った場合には、集中して、注意して、関心を持って見るという意味を含みます。
観客・観劇・観戦と、このように使われますが、意味を含めると、ああなるほどと思いますよね。
「天」
これは、空を表すばかりではありません。
万物の支配者とか(例:天帝など)そこからさらに、天地・万物を支配する理法と言う意味があります。
この例で言うと、「運を天に任せる」なんて言ったりしますよね。
「望」
満月を表すこの文字ですが、信頼(例:人望など)や、願い(例:所望など)、また少ない例ですが、恨むことも言いますね、怨望と言って。
ただしこのどれでも無くて、今回の場合は、遠くを眺める事を指します。
これは、物理的な距離ばかりの話では無くて、表面的な物ごとの、その奥底に秘められた真理を探るという意味も含まれていると私は思います。
なぜなら、観天望気は至近距離の観察も行うからで、常に遠くだけを見ているわけではないからです。
「気」
こちらは、道教や中医学と呼ばれるもので使われている単語です。
意味は、万物を形作る要素で、見えないもの。
さらに流動的に動き、何らかの作用を引き起こすもの、のことです。
理科で言う「気体」とはまたちょいと違います。
観天望気のイメージ
以上の言葉をつなぎ合わせると、観天望気のイメージはこのようになります。
自然界の万物が従っている法則と、そこに流れる作用力(反作用力も含む)を、冷静に客観的に見つめて、自然の摂理が導き出す答えを探る事。
分かりづらいですかね。
平たく申しますと、やや乱暴ですが、こうとも言えます。
表面にとらわれずに自然界の現象を観察して、そこに自然界の規則性をみつけて、これからの天気変化を予測する事。
いかがでしょう。
気象庁の生物季節観測が、観天望気に含まれるということが、なんとなく分かっていただけたでしょうか?
観天望気の目的
こちらは、「自然界の動植物や現象などから、今後の天気変化を予測すること」となります。
これが観天望気の目的。
気象庁の生物季節観測の目的は、「同じ場所にある特定の植物を長期間観察することで、季節の変化や変動を読み取ること」でした。
ですので、観天望気の方が、古くからおこなわれていて包括的。
生物季節観測の方が、明治時代から始まってピンポイントの範囲で科学的。
そんな違いがあります。
観天望気の言い伝えを疑った私
一方、観天望気には、言い伝えみたいな面があるんですね。
例えば、朝焼けは、雨になる、夕焼けがあれば晴れてくる、とか。
猫が顔を洗うと雨になる、だとか。
新しい処では、飛行機雲がなかなか消えないと雨が降るなんて。
これで私は若い頃、まぁ非科学的な言い伝えだ事と、バカにしてたんです。
ところがです。
伝えられてきた経験則ですから、下手したら1000年2000年とかの話も混ざっているんですね、飛行機雲は違いますけど。
けっこう当たるんですね。
もちろん、そう言った現象に即効性の物もあれば、2~3日後にそうなる時もある。
動物の行動に関しては、即効性が多い感じですが、雲などは2日後あたりにそうなる場合が多い。
それで気になって科学的に調べてみたら、上空の偏西風や、上層と下層という大気の動きの違いが関わっていて、なるほどこの現象が視られれば、この場合は10分後だの、この現象なら3日後に起こる予兆だのと分かってきたんですね。
そうしたら、ほぼ100%天気予測ができるようになったんです。
1年はかかりましたけど。
自分のいる地域の半径1kmならほぼ確実に。
これには驚きました。
という事で、本日はここまで。
あと少し、続きはまた明日。
では、最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐