エゾニワトコ~その3

白川静 字訓 喫茶~言の葉
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☆川辺の植物忘備録

< エゾニワトコ~その2より続く

エゾニワトコ②

さてこうして色々役立つニワトコですが、私が調べたいのはエゾニワトコです。
つまり今までのは前置き。
ニワトコ

こういったニワトコとエゾニワトコの違いはと申しますと、そんなにパッと見、見分けがつかないんですね。
エゾニワトコの方が、花の付き方が全体に三角形に尖り気味、だとか。
葉の縁のギザギザ(鋸歯)が荒っぽいこと、だとか。
花がニワトコよりやや大きめ(一つの花が直径5~7mm)※ニワトコは4~5mm、だとか。

ちょっと時期によっては見分けるのに苦戦しますね。
エゾニワトコ

☆おまけ~ニワトコの語源

削り掛け

さて。
本題をこの程度にして終わるつもりが、、、最後の最後に気になることが出てきました。

これまでに述べたように、ニワトコを山たづという事は分かりました。
そして山たづの語源らしきものも。
ただやはりこれで終わってはどうも収まりが悪いんですね。
そう。
ニワトコの語源も調べなきゃならんだろうと思った次第です。
ニワトコ

そう言う事で、ニワトコの語源について考えてみます。
元々は、ミヤツコギ(美也都古木)と言ったそうです。
漢字では造木。

ミヤは、宮、お宮の事ですから神事です。
ツは、格助詞(連体修飾語)。
コギ(名詞)がそのものを指します。
なのでミヤツコギは、神事に使う神聖な木という事でしょうか?
削り花

あ、そうですね、先ほどの十六花
あの原型は、昔は木を薄く何度も削って作った木幣(削り掛け)だったそうですから。
そう言ったことからも、ミヤツコギは削り掛けを指しているのかなと思われます。
削り掛け
そして時代は下って、紙が作られ始めると御幣という形になって行ったのでしょう。
御幣

推理~ニワトコの語源

では、ミヤツコギが、どうしてニワトコになったのでしょうか?
もちろんここからも推理ですが。
ニワトコ

ここは割合簡単に解けそうなのです。
ミヤツコギは神聖な樹木であり、薬になり、食用にもなり、小物細工の原料にもなる大変重宝なものです。
それで実際に庭木として各地で盛んに植栽されたそうなんです。
つまりニワトコのニワは、庭。
日本庭園

ということは、どうも残りの、「トコ」に意味がありそうですよね。
そこでトコについて考えてみます。
まず漢字で書くと、トコもユカも同じ「床」です。
共通するのは平らな場所という事。

トコとユカ、それぞれの言葉の発生時期を比べても面白いですね。
それで発生は、トコが縄文時代からで、ユカがその後になります。
ネコと寝床
これは建物の発達と同じで、トコがまず土を高くして平らにならして神聖な場所(竪穴式住居)としたと言われているのに対し、ユカは木造建築としてその平らな部分を地面から切り離し、柱によって高い位置に持ちあげたものと言われています(高床式住居)。
ネコと寝床
そして漢文学者白川静さんの字訓には、床(とこ)と所(ところ)は同源だと書かれています。
その字源によりますと、トコとは、元々の日本の言葉で「神の居る場所」とか「永遠なるもの」の意味だそうです。
白川静 字訓

そう言えば江戸時代までは武道場に、神棚ではなく神床(神を奉る床)が置かれていたそうです。
それが明治政府の号令で、こちらもユカと同じく、高い処へ奉られるようになったのも面白い一致ですね。
神棚

こうしてみると、元々ミヤツコギだったものが、書院造が成立したころ(室町時代)に床の間の文化と共にニワトコ(庭床)と呼び名が変わっていったのではないでしょうか?
家の中に床の間、庭に神聖なミヤツコギを植えた庭床といった具合です。
< 緑の癒しを取り入れる文化 (※昨年、床の間などについて記した記事です)
床の間

それがいつしか場所を示す庭床が、そこに植えられた木の名前として定着して行ったというのが私の推理です。
ネコと寝床
という事で本日はここまで。
ようやくニワトコ終了です!
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐😊

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Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
喫茶~言の葉
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