桃の話

桃 喫茶~言の葉
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☆桃と、日本

とうまんじゅう

昨日、連休初日。
札幌ではいよいよ、雪まつりがフィナーレに向かって多くの人でにぎわってる頃。
私は家にこもって読書。
そして、おやつにこれを頂きました。
桃饅頭
桃饅頭。
「とうまんじゅう」と言うのだそうです。
私はずっと「ももまんじゅう」と読んでいたのですが、いや、お恥ずかしい。
お茶と一緒に頂いて、本もかなり読み進めることができました。

さて、今日はこの、桃に込められた意味についての雑談です。
では参ります。
桃

桃が日本に渡ってきた時期

桃は元々日本に生えていた植物ではありません。
中国大陸辺りから日本に入ってきた植物です。
それでどうやら今から6000年前あたり、縄文時代の遺跡から桃の種が出て来てるそうですね。

この6000年前と言うのもまたミステリー。
この時期の中国大陸には、まだ統一国家と言うものができていない新石器時代。
そんな時に、日本に渡ってくる集団があったという事ですね。
無謀に近い命懸けの船旅です。
もしかすると、行き来というより一方的に渡ってきたのかもしれないです。
その時、桃を食料として積んでいたのかもしれません。
生ではすぐに傷みますから、何らかの加工をしていたと考えるのが自然でしょう。
桃

そして無事に上陸した集団が、種を大地に残したのではないでしょうか。
ただし、加工食品となれば、その種から芽が出ることは無かったでしょう。

ちなみに、当時、日本から大陸に渡ることは無かったと思います。
なぜなら、緑に囲まれて狩猟採取している縄文人が、わざわざ水平線の向こう側に渡るはずもないですし、また、桃の種を持ち帰るにはもう一度水平線を越えねばならないからです。
桃

漢の時代

ちなみに、ですが。
公式な資料で、大陸と日本のやり取りが見られるのは、かの有名な後漢書にある、「倭人伝」ですね。
邪馬台国の卑弥呼が記されている、あれです。
漢委奴国王印という金印が、現在の福岡あたりで発見されて黒田藩が保管していたという話は、九州生まれの私にとってロマンでした。

漢委奴国王印

福岡市 博多港の歴史 (fukuoka.lg.jp)

余談ながら。
漢委奴国王印、ですから、大陸では「漢」の時代です。
漢から伝わってきた文字で、漢字と呼ぶようになったと聞いたことがあります。
ただし、大陸での漢字そのものの起源と言うのは、まだ正確には解明されていないようですね。
一説には、金印が日本に贈られる約180年前あたり、秦の始皇帝が文字を統一した時にさかのぼると言われております。

☆桃に込められた意味

道教と桃

さて、話を桃に戻します。
桃饅頭、美味しかったですと言う話。
どうして饅頭を桃の形にするのか?
すごく不思議でして、調べてみたんです。

すると、道教の伝説に、こんな話がありました。
大陸神話女性神の西王母が、蓬莱山で不老不死をもたらす桃を栽培しているという話。
この桃は、「蓬莱の桃」と呼ばれ、食べると不老不死になるとされています。
これがどうも、関わっているんですね、桃饅頭に。

それで、中国大陸では、桃は不老不死や長寿の象徴となりました。
そして特に、誕生日や重要な記念日に桃形の饅頭(桃饅頭、寿桃)を食べる習慣として根付き、その人の健康や長寿を願う意味込めたものだそうです。
寿桃とも呼ばれるらしいですね、この桃饅頭。

そうそう、詩人・陶淵明の桃花源記にある桃花源は、理想郷として描かれていました。
桃

さて、「蓬莱の桃」伝説が記された道教、これが成立したのが、後漢末期。
そう、先ほどの「漢」と「日本」の交流が見られる時期です。

ということはおそらく、この「蓬莱の桃」伝説に関しても、同時に日本に渡ってきたのではないかと思われるのです。

日本と桃

日本でも、桃は幸運や邪気払いの力があるとされます。
そしてやはり、長寿の象徴として古くから親しまれていますね。
特にひな祭りでは、桃の花が節句の象徴とされますから、桃形のお菓子が用いられることが多いです。

また一方で、桃の木は春の訪れと共に花を咲かせたり、豊かな果実を実らせることから、生命力や再生の象徴とされてきました。
冬が終わり、新生の始まりを告げる象徴という訳です。
こちらは大陸の伝説をそのまま受け継いだ形でしょうね。
桃

さらにもう一つ。
邪気を払うという力を、桃に託しています。
こちらは、桃の花や実に限らず、樹木そのものにもその力を宿しているとみているようです。
そこで日本では、桃の節句(ひな祭り)に桃の花を飾る習慣が根付きました。
これは家族の健康と女性の幸せを願う行事ですよね。
桃

日本神話と桃

さらに古い話では、日本神話。
これに、黄泉の国に行ったイザナギノミコトが現世に戻る際、追いかけてくるヨモツシコメ(あの世の鬼みたいなもの)や鬼の軍勢から逃げ切る際に桃を投げるんですね。
あの世とこの世の境目に生えていた桃の木になる実を取って投げつけた!

私は子供の頃、たくさんの鬼に追いかけられてる途中で振り返って桃を投げるのは変だと思ってました。
もっとこう、効率の良い兵器みたいなのをドカーンとやった方が良いのに、って。

けれどその時には桃が大活躍。
鬼どもを撃退するんですね。
その時、投げた桃の実は、たった3個。
たった3個で鬼の大軍を撃退です。
桃

そのこともあり、地上に戻れたイザナギは、その桃の木に名前を授けます。
命名ですね。
その名が意富加牟豆美命(オオカムヅミノミコト)
それ時桃の木は「日本に住むあらゆる人が苦しい時、助けてあげてくれ。」と頼まれたそうなんです。

そう言えば確かに、桃太郎もそうですよね。
桃饅頭を頂きながら、はるか昔に思いを馳せておりました。
桃

という訳で、本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き日でありますように💐

< 百の話へと続く

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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