お正月の松の話②

松飾り 古典園芸
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< お正月の松の話①より続く

☆古代日本人にとっての松

・日本に生まれた神道

縄文時代までさかのぼるんですが、日本人は自然に囲まれて生活していました。
学校で習いましたが、この時代は狩猟生活ですね。
魚介類や、野山の動物。
そして森の木の実や、野草を採取して食べていたわけです。

それで、自然に生かされているニンゲンという考えが出てくるわけです。
そしてニンゲンを生かしてくれる、分け前を与えてくれる「カミ」という存在をイメージしたわけです。
または「カミ」を感じたと言っても良いですね。
ということで後に、八百万神(やおよろずのかみ)と言う言葉が生まれてきます。
これは、もうそんじょそこらの自然物に「カミ」がいらっしゃるわけです。

「カミ」は八百万(とてもたくさん、という意味)もいらっしゃるわけですから、いろんなカミがいる。 
とても親切なカミもいれば、すぐ怒るカミもいる。
ジブリの、もののけ姫でも出てきたようなタタリガミもいるし、ニンゲンにはまったく無関係なカミもいる。

そして大和言葉として「カミ」と言う言葉が残り、漢字の「神」が充てられたんです。
そんな世界観をまとめ上げて体系化したのが、神道ですね。
神社

・古代日本人が感じた見えない力

では八百万神の中に、松の神はいるのかと申しますと、それはいないみたいですね
しかし、樹木神はいます、その名が「ククノチ」。
漢字では、久久能智。

ククノチ神は、木の精というモノだったらしいです。
またどうも、ククノチは、たくさん居るというんですね。
木の神たち(複数形)を、ククノチと言うそうです。
つまりこれも、分かりやすく言えば、もののけ姫に出てくる「コダマ」ですね。

その「コダマ」、これは樹木の精霊と言われる「木霊(こだま)」から来ている名前でしょうね。
樹木そのものではなく、樹木に宿る精霊、それが木霊(木魂)なんですね。
つまり、木霊とククノチは同じものなんです。
山に向かってヤッホーと叫ぶと、その声が返ってくるのを山彦といいますが、これも木霊のなせる業と考え、コダマともいう訳です。

ということで、古代日本人は、森の樹木に何か超自然な力が宿ってると感じていたわけなんですね。
神社

☆松は依代(よりしろ)

松の木独自の神はいないと書きましたが、神道上、松には特殊な働きがあります。
それは、神の依代としての働きです。

依代というのは、神がそこを宿にしたり休んだりするところ。
神は依代を目標にして別の世界から降りてくるというんです。
仏教でいえば、仏壇の花もそうですね。
つまり、お墓や仏壇に花を飾るのは、もともと供養と言うよりは新鮮な神や仏の依代を飾るという事です。

話を戻しまして、松ですが、不老長寿をあらわすと昨日書きました。
そこに依代です。
これは樹木神のククノチだけではなく、様々な神の依代になるとされたようですね。

ここで新年の門松が来るわけです。
家の門に松を飾って、家系の永遠の御繁栄を願うと同時に、魔を払う意味を重ねるわけです。
さらに、ここを依代として降臨するのが、歳神様なんですね。
「どうぞ良いお歳を!」いう年末の挨拶に出てくる「お歳」これが歳神様です。
門松

☆歳神様とは?

さてその歳神様。
これはもう長年の間に様々な面を持つ神様になってまして、代表的なのが以下です。

①来訪神

これが今の感覚では良く分らないでしょうが、来るんです何者かが。
いや、いらっしゃると言わなければ罰が当たりますね。
とにかく、ヒトでない目に見えぬ存在が訪ねてみえるんです。

ではまず、いついらっしゃるのか?
回数は、年に一回だけ。

そしてこれは、地域によって二つに分かれます。
まずは12月31日大晦日の日没と同時に。
そしてもう一つが、年が明けた1月1日日の出と同時に。
それで今も強く残る風習が、初日の出を拝み手を合わせる一連の作法ですね。
これは歳神様を拝んでいるわけで、太陽と言う恒星を天文学上観測しているわけではないのです。

②穀物神

これは、稲作文化が始まった弥生時代以降を主とする農業神信仰から生まれてきた考えだと思われます。
作物の収穫量は、年によって色んな気象条件が変わり、増減します。
これはもう昔の人にとっては神の領域。
そこで穀物神も、年の始めにその年の豊穣を願う対象の神として歳神様に加えられていったようです

③祖霊信仰

日本の古い信仰、こちらは神道ですが、それと同時かそれより古いか、祖霊信仰と言うのが生まれてました。

これは、亡くなった先祖の霊が、一定の期間を過ぎると個性が失われて、祖霊と言う集団に加わるんです。
平たく言うと、今でも○○おじいちゃんの霊、△△おばあちゃんの霊と呼ばれていたものが、ひとくくりで「ご先祖様」となるわけです。

元々は、前神道的な考え方でした。
その後、空海上人・最長上人が唐より持ち帰った密教(秘密仏教)から神仏混交となり仏教的にも五十回忌が済めば弔い上げとなり、祖霊となるようですね。

この大きな集団のご先祖様の祖霊が、お正月あたりに歳神様としていらっしゃるという側面も生まれてきたんですね。
松

④歳徳神

こちらは中国大陸から渡ってきた陰陽道での福徳を司る神ですね。
いらっしゃるのが、恵方。
そう、最近はやりの恵方巻でお馴染み。

その神が、歳神様と混ざって歳徳神になったのです。
正月に歳徳神が恵方よりいらっしゃって、福や運などを授けてくださるという信仰です。

☆お正月に正しく歳神様をお迎えするには、松!

さて、31日1日に歳神様を正しくお迎えしないと、いらっしゃらないというのだから大変です。

では、おらっしゃった頂くにはどうしたらよいのか、ということなのですが、まず何をすべきか?
それを以下に書きますね。

①大掃除

こちらは、順序があります。
まず神棚から始めて、台所や各部屋と言う順です。

②松迎え

こちらは、門松や松飾の松を山に採りに行くことです。
今では山に勝手に採りに行ったら犯罪ですから、お店で買う事になります。
近所の神社では、もう注連縄や破魔矢に熊手、そして門松も売られていることでしょうから、どうぞそちらでお求めに。
松飾り

③お歳暮

これは、お世話になった方や、親類縁者がそれぞれの過程で迎える歳神様に対しての贈り物です。
本来のお歳暮の開始日は、12月13日となります。
これが現代ではもう無茶苦茶になってますが。

☆正月飾りのベストは12月28日!!

先ほどの、大掃除開始や松迎えを始める日も決まっていて、12月13日が良いようです。
お歳暮開始日もそうでしたが、13日は鬼宿日といって縁起の良い日なんですね

さて、松迎えで松などを持ってきました(買いました)。
それをいつ飾るのかというと、これも決まり(縁起)があります。

忙しい方は、13日から飾り始めても良いようですが、この日までに飾り終えなければ意味がないという日があるんですね。
それがタイトルにもある12月28日。
この記事を読んで下すってる方はラッキー。
そう。
明日です。
松飾り

早く飾ると、その分、穢れるでしょ。
この穢れ(ケガレ)は歳神様に失礼なんですね。
穢れは、気枯れです。
せっかくいらっしゃった歳神様のエネルギーを奪うんですね現代風に言うと。
ですので、大晦日(12月31日)ギリギリに新鮮なものを飾りたい。

ではなぜ28日かと申しますと、29日は二重苦つながりどうも縁起が良くない。
それで30日31日どうもどたばたやっつけ仕事で歳神様を迎えた敬意が感じられない。
なので12月28日なんだそうです。
だから私は今日門松と注連縄と鏡餅を買いに行きます。

こういう決まり、守ると楽しいし、縄文時代からのなんだか見えない力が授かるようで実に気持ちがスッキリするものです。
松飾り

さて、こうしちゃいられない。
明日までにいろいろ買ってきて飾らなきゃ。
という訳で、今日も最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳い一日を!
さて、いそがしいいそがしい💐

< お正月の松の話③へと続く

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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