スナヤツメと、やさしい園児

スナヤツメ 命の不思議
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< 「魚のようで魚でない、スナヤツメ」の続きです。

☆子供から大人への大変身

昨日、スナヤツメについて書きましたが、まだもう少し書かせてください。
実はスナヤツメ、子供と大人では大きさ以外にも大きく違う部分があるんです。
その違いを大まかにご説明。
ちなみに、スナヤツメの子供時代を「アンモシーテス」と呼びます。

誕生してアンモシーテス。
そこから、大人になるまでに3年半かかります。

昭和までは全国あちこちに普通に暮らしていたスナヤツメも、現在ではその数を減らし続けています。
地域によっては絶滅危惧種に指定されているのです。。

口の大変身

子供の頃は、漏斗(ロウト)状に開いた口をしていまして、藻や水の中の落ち葉屑を食べています。
こちらは先日、私が捕まえたスナヤツメの子供、アンモシーテスの口を下から見上げた写真です。
アンモシーテス
そして大人になると、円口類というように、吸盤状に変わるんですね。
季節としては、秋。
スナヤツメの成人式の季節です。
そしてこちらが、スナヤツメの大人の口です。
スナヤツメ
ちょっと怖い感じがしますが、この口は川底の石に張り付くために使うのです。
何と言っても、前にも書きましたが、左右対になっている胸鰭(むなびれ)などがないために水中で体が安定しませんよね。
だから、石に吸い付いて体を安定させるのです。

この、体を安定させる理由ですが、川の流れに逆らって上流に向かうためと、産卵時に体を固定させるためです。

消化器の大変身

このように、大人になって食べ物を摂る口は無くなります。
という事は、スナヤツメの大人は、命尽きるまで断食を続けるという事です。

そうなると当然、栄養を消化吸収する消化器官は必要なくなり、消滅します。
秋に大人になったスナヤツメは、そのまま冬を越え、翌年春から夏にかけて交尾産卵をするのですが、産卵後は確実にその命を終えるのです。

しかし、秋に大人になってから、長いものでは翌年夏まで食べ物を一切摂らずに生き続けるのですから。
次の世代に命をつなぐという尊さと凄まじさを、私はそこに感じます。
スナヤツメ

目の大変身

アンモシーテスの時は、実は目が皮膚の中に完全に沈み込んでいて、盲目状態で過ごしています。
泥の中に潜って生活していますので、視野は不要という事なのでしょう。
ちなみに私が捕まえたアンモシーテスの顔ですが、鰓孔7つは確認できますが、目はありませんよね。
つまりアンモシーテスの時は、スナヤツメではなく、スナナナツメといったところでしょうか。
スナヤツメ
もうちょっと、目の部分だけにズームしてみますね。
いかがでしょう?
まるで目を閉じたアザラシ??
スナヤツメ

それが大人になって、繁殖期になると目が表面に出てくるようになります。
ところが一説によると、目ができても使わないのだとか。
使っても、産卵期にわずかに開く程度と言われています。
ただし、この目が表面に出て来てはじめて、スナヤツメ(砂八目)となるわけです。
スナヤツメ 鰓孔

☆やさしい園児

赤ん坊スナヤツメVSやさしい園児

そういったスナヤツメの子供が、私の網にかかったわけです。
生きた化石で、ウナギのようでいて、魚ではないのですから。
これは子供達に見せたいですし、実際その場に保育園児さんたちがたくさんおりましたので説明してあげました。
「お顔がおもしろいよ、○○○のところが違うんだよ、恐竜の時代から生きてるんだよ。」と

そのあと、アンモシーテスの資料写真を撮影しようとしたのですが、一人の園児さんが「何してるの?」と声をかけてきました。
「スナヤツメさんのお顔の写真を撮りたいの!」と私。
「じゃあお手伝いしてあげる」と園児さん。

サッと取り出したのは虫メガネ!
その虫メガネでスナヤツメの顔を大きくしてくれようとしてるんです。
なんとやさしい!!
スナヤツメ

ところがスナヤツメ。
とにかく動きが早いんです。
泥の中でノンビリ眠っていたところ、網にかかって太陽の下に引きずり出されたのですから、まぁ暴れる暴れるスナヤツメの子供。
スナヤツメ
写真で見ると伝わらないと思いますが、とにかくバババッバババと動き回って、そのやさしい園児さんが必死に虫メガネを合わせようとするんですが、園児さんの動き1に対して、アンモシーテスの大暴れ速度15。
こうして、園児さんのやさしい気持ちをアンモシーテスは木っ端みじんに打ち砕いたのでございます。
スナヤツメ

やさしい園児:リベンジ

私のために虫メガネを合わせてくれようとしたその気持ちが嬉しくて。
しかも気持ち落ち込み気味の園児さんの様子が切なくて。

「あ、そうだ、フクドジョウさんのお顔を撮らなきゃいけないんだった!!」と園児の前で演じまして。
え~、お分かりでしょうか??

すると園児さん、フクドジョウがどれか覚えてくれてまして、しかも黄昏ているとでも申しましょうか、ボーっと水槽の外を眺めてるんですフクドジョウが。
それでようやく、園児さんの動き1に対してフクドジョウの動き0.05みたいな感じで、めでたしめでたし。
フクドジョウ
はい、もちろんこの虫メガネの角度では、私の撮影には全く関係ないのですが、その気持ちが嬉しかったので。
「ありがとう、とても上手に撮れたよ。」と伝えた後のその笑顔の素敵な事と言ったら。
本当にもう、こういう小さな子供たちのやさしい気持ちは、私たち大人が大切に受け止めてあげたいものですよね。
フクドジョウ

屋外授業を受けた園児さんたちが帰って行ったあと。
観察のために捕まえた生き物たちを、傷つけないようにそっと元の場所にかえすのですが。
その時にジックリ、スナヤツメ(アンモシーテス)を撮影したのが、先に載せた写真です。

そしてこちらは、やさしい園児さんのお相手をしてくれた黄昏フクドジョウ君。
どうです、黄昏ているでしょう?
フクドジョウ

という訳で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐😊

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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