☆ごきげんなパン
ぼかし肥料
植物を育てるのに、ぼかし肥料に凝った時期があります。
米ぬかや、油粕、そして乾燥鶏糞など。
それらに土を混ぜて、適度な水分を与えて混ぜ込んで、発酵させて作り上げる肥料の事を言います。
発酵させるので、生きた微生物をたくさん含んだ肥料ですので、これらがまた植物が育っていくのを助けてくれるのです。
そうですね、イメージ的には「生きて腸まで届く、アレ」みたいな。
ちょっと悲しい事に、あれから引っ越し。
今では自宅周辺のご近所さんがたくさんいらっしゃるので、ぼかし肥料は永遠に作ることはできなくなりました。
独特の匂いが出るのですよね、発酵中に。
私なぞは大変良い香りに感じるのですが、臭いと感じる人には臭い。
納豆的な香りが微風に乗って、発酵が終わるまでの1週間から10日、半径10mに四六時中漂いますから。
それは、さすがに近所迷惑でありますから。
嫁さんのパン作り
嫁さんは15年ほどになるのかな、パンをたまに作っています。
生地をこねてイースト菌混ぜて、発酵させて。
この過程は、ぼかし肥料と仕組みは全く同じで、見ていて楽しいです。
ただ、こちらの香りは大変良いので、ご近所迷惑になりません。
発酵差別だ~~と、どこぞの活動家みたいに声を上げたいぐらいですが、確かにこちらの方が良い香りなので、ぼかしの負け。
ごめんね、ぼかし肥料。
先日。
母や叔母に贈るパンを仕込んでいた嫁さんが、実に嬉しそうにこう言ったのです。
「あら、今日の菌は機嫌が良い」
そうなんです。
土を作るにしてもパンを作るにしても、発酵というものは、菌との会話なのですよね。
どれどれと私が台所を覗くと、イースト発酵で膨らんだ生地が、容器の蓋を押し開けておりました。
なるほど最初は小さな生地だったのに、ここまでふんわりと膨らんで。
おおよそ3.5倍になったそうです。
確かに菌の機嫌が良いなぁと、私にもわかりました。
☆ふきげんな芋餅
発酵・熟成・腐敗
発酵と腐敗
ここで、発酵と腐敗の違いについて、簡単に触れておきましょう。
どちらも微生物の働きで物質を変化させていくことなのですが、違いは、人間にとって良い結果を招くか、悪い結果を招くかの違いです。
例えば小麦粉をイースト菌が上手く変化させたらパン生地になるので、発酵。
小麦粉が何かの菌で食べられない状態に変化させたら、腐敗。
こうなります。
もちろん先ほどの、ぼかし肥料でも同じ。
白い菌糸があちこちに見えて、どこか糀(こうじ)に似た香りがすれば、発酵。
なんだかベタッとしていて、長い事放置されていたドブの底みたいな匂いがしたら、腐敗。
微生物の働き次第でどちらにも転びますので、作り手は菌と会話するように手助けをしつつ発酵に導くという訳です。
酒作りでも、味噌作りでも、みんなそうですよね。
なので良い発酵をさせるためには、作り手の腕と、菌の声を聴く耳とがとても重要になってくるわけです。
熟成
それとは別に。
熟成という物があります。
これは、微生物の力ではなく、そのものが持つ酵素の働きで物を変化させるもの。
私がやっている薫製づくりにはこれが関わってきます。
なにしろ薫製は、熱や煙で食べ物を変化させるので、そこに微生物はなかなか関われません。
また関わってもらっては困ります。
熱と煙で仕上げて行って、火を止めたすぐに食べても美味しくないんです。
薫製の出来立てなんて、とてもとても美味しくない。
そこで一昼夜、外の風にさらして熟成させます。
すると余計な煙成分やらが飛ばされて、アミノ酸が増えて旨味も増し、体に吸収もされやすくなり、薫製本来の旨さが出てくるのです。
これがまた、楽しくもあるのです。
ただ注意しなければならない事は、熟成のやり過ぎ。
熟成の期間が長すぎると、雑菌がついて腐敗したりしますから。
私の芋餅
黄粉がついた固めの九州の芋餅を頂きました。
サツマイモが使ってあり、歯ごたえ充分。
噛んでいるとあとからあとから甘みが拡がっていく絶品です。
頭を使って何かを仕上げようとするとき。
ちょっと疲れてきたなと感じたら、この芋餅を数切れ、日本茶と頂くのがまた何とも言えず幸福なのでした。
冬だから安心していたのですが、一昨日、その大事な芋餅と芋餅が重なった部分に、実にカラフルなカビが集会を始めておりまして。
残り二切れだから大事に食べようと取っておいたのが間違いでした。
まるで熟成のやり過ぎです。
窓の外では、新たなご馳走にシジュウカラが大興奮して、オープン直後のバーゲンセールみたいな感じになっておりました。
彼らには、熟成発酵だったようですね。
ま、いっか。
という事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐😊