花札:1月の札

花札 松に鶴 古典園芸
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☆松に鶴

睦月の四枚札

さて、旧暦の一月に入りました。
そこで今日は、花歌留多(花札)の睦月(一月)の札の図柄と意味をご紹介します。

睦月の札はこの四枚です。
花札 一月

ここに描かれているのは、松と鶴と短冊と太陽です。
それぞれに意味がありますので、見て行きましょう。

一月のカス札

花札全四十八枚中、二十四枚がカス札と呼ばれます。
このカス札は、その月の植物だけが描かれた札で、札遊びの折は基本的に低得点のものになります。

そして一月のカス札がこちら。
花札(カス札) 一月 松
描かれているのは、松です。
葉先の芽が黄色いので、若松でしょう。
若松は、正月飾りとして使われる歳神様の依代ですから、一月の植物に大変ふさわしい植物ですよね。
これが一月には二枚あります。

さて松がこの季節札に描かれている理由は、前にも記事にしましたが、歳神様が宿る霊木だからでありましょう。
< お正月の松の話①

松は樹齢が長く、いつまでも青々としている様子から縁起の良い木とされて、長寿・繁栄・祝賀、それに吉祥や節操、更に不変の象徴とさてれも来ましたから、大変おめでたい。
古代のカミとの交流にもこの木は関わっており、祭りや政治(まつりごと)という言葉の元にもなっております。

一月の短冊札

花札全四十八枚中、十枚が短冊札です。
一月には一枚、この短冊札があります。
花札(短冊札) 一月 松
短冊の文字は「あかよろし」と読むのだそうです。
意味は、「赤々として、とてもめでたい」です。
昔から日本人は、赤色に神聖や邪気払い、そして生命力などを重ねました。
なので先日お話した、正月に頂くお屠蘇も、歳神様の効果を増すために朱塗りの器で頂くのが正しんだそうで。
屠蘇

これが一月の短冊札に、めでたい松とめでたい赤の短冊、そしてその言葉が描かれている理由です。
もしかして、点々で描かれているのは、折しも降り始めた雪なのかもしれませんね。

一月の光札

花札全四十八枚の中に、特に価値の高い札が五枚あります。
これを光札と申します。

その五枚の内の一枚が、一月のこの札です。
「松に鶴」という名前で呼ばれる札です。
花札(光札) 一月 松に鶴
鶴は道教で、仙人の乗る鳥とされ、そのめでたさや神秘性が大陸から伝えられました。
そこから長寿や吉祥を象徴します。
また鎌倉時代などは戦勝祈願に。
また江戸時代には夫婦円満や祝い事の象徴となって行きました。

花札に描かれているのは、頭が赤いので丹頂鶴でしょうか。
これは先ほどの短冊札、赤良ろしに掛かってきますね。
めでたい上にめでたく、更にめでたい。

松に囲まれ、めでたい鶴が見上げているのは赤い太陽です。
新年の日の出とともに歳神様がいらっしゃるとも申しますので、これだけめでたいものが揃ったうえで、鶴が見ているのはその年の歳神様だと私は思います。

鶴と太陽

光札の一月、松と鶴の太陽が描かれていることに触れている話は、私はこれまで聞いたことがありませんが、どうもこうしてみていくと、一月札の肝はこの太陽だと思えて仕方ないのです。

ちなみにハ月の光札は、芒に月(満月)です。
花札(光札) 八月 芒に月
この月と太陽は対を成すものですから、一月が松と陽でも良かったように思えますが、なぜこれが松と鶴としか呼ばれないのか。

ここに私は秘密があるとにらんでいます。
これは縄文時代以来の神道を重ねれば分かるのではないでしょうか?
私達が神社に詣でますが、その際、ご神体を直接見る事はしません。
畏れ多いからです。

この考えを、花札に重ねて見ましょう。
歳神様をシッカリと頭上に描きながら、言葉では全く触れていない。
このこと自体が、ご神体に直接触れるのは不敬に当たるという日本人の考えそのものだと私は思うのです。
いかがでしょう?
あなたはどう思われますか??
花札(光札) 一月 松に鶴

花札一月の言葉遊び

日本人は言葉遊びを好み、昔から色んなものに組み込んできました。
花札も例外ではありません。
各月に、それはささやかに、そして見事にみられます。

さて一月は何でしょう?
気付いておられる方もいらっしゃるかもしれません。
お分かりでしょうか?

ヒントは「つ」です。
答えはこの記事の最後に書いておきますね。
花札の種類

☆睦月

最後に陰暦での月の呼び方(和風月名)で、一月を睦月(むつき)と呼びます。
これには当然意味がありまして、この意味を覚えるとこの呼び方がよりシックリきます。

睦月は、親族がお正月を一緒に過ごすために集まり、仲を睦び合う月だからこう名付けられたのだそうです。
つまり、歳神様の元へみんなで集まって仲良く絆を深め合う月の意味です。
ここでも歳神様が関わって参りますので、いかに日本人にとって一年の始まりの軸がそこに有ったのかが分かる言葉でありますよね。

さて、先ほどの花札睦月の言葉遊びの答えは、「松」と「鶴」が「つ」つながりだという事です。
松(まツ)と鶴(ツる)が呼び名でも結ばれており、こういうささやかで粋な言葉遊びを日本人は古来より好んだのです。
花札(光札) 一月 松に鶴
という事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐😊
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Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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