桑って凄い!

桑の実 命の不思議
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< 「おカイコさん」より続く

☆カイコと絹

カイコの吐きだす糸が絹糸で、その絹糸を織ってできたのが絹織物。
この絹織物というのが、漢ではほぼ品質も生産量も安定して来て、インドやヨーロッパの方との貿易が盛んになって行った。
ざっと、こんな歴史がある絹織物ですが、こうしてみると、カイコは自分では何もできないけれど、人の歴史を作ってきたという面もあることが分かります。
なんとも凄い昆虫ですよね。
桑と蚕

☆カイコと桑

そんな凄いカイコですが、その食べ物と言えば「桑」です。
そもそも、桑という名前も、カイコが「食う葉」から来ているとも申します。

そこで調べてみると、桑以外でも食べることは食べるらしいのですが、それでは吐き出す絹糸が大変質の悪いものになるんだそうですね。
だから、上質な絹糸を得るには、やはりカイコには桑を食べさせなければならないそうなんです。

つまりこれは、カイコの絹糸には、何かの理由で桑が一番良いという事を示しています。
桑の葉

またその桑が、養蚕のためにどれぐらい必要かと気になりまして、調べてみました。
幸い、こちらは簡単に分かりました。
農水省の資料によりますと、着物一着分(約1kg)に必要な絹糸を採るためには、桑の葉が98kg必要と書いてあります。

こうなれば、桑という植物が秘めているものがどうしても知りたくなるのが私の性分。
わかる範囲で調べてみましょう。
絹糸と機織り

☆呉服と戦後

弥生時代に伝わっていたとはいえ、江戸時代までは国内の絹も養蚕も大したものではありませんでした。
江戸時代前半あたりまでは、大陸からの輸入品が断トツに高品質。
このことは、呉服(呉の服)という言葉に残っていますよね。
そこで幕府が中期より養蚕業を奨励して、徐々に日本も力をつけてきたんですね。

それを素地に、明治の文明開化で一気に西洋の養蚕技術を取り入れて、国内でも世界に誇れる養蚕と絹織物ができるようになりました。
その名残が各地に残る桑の文字(例えば桑園とか)、そして地図記号としてわざわざ独立していた桑畑の記号です。

しかしその国内の養蚕も、第二次世界大戦後に化繊が大量に生産されるようになってきて徐々に衰退傾向にあるのは哀しい事ですね。
実際に、平成25年にはその桑畑の地図記号も、統合廃止されました。
桑畑記号

☆マグワとヤマグワ

養蚕の飼料

養蚕に使われている桑は、中国大陸原産のマグワ(真桑)と日本にも自生しているヤマグワ(山桑)です。

マグワは、先述の通り、養蚕本場の桑です。
なのでカイコと絹糸生産への相性が抜群です。
だからマグワを食べて育ったカイコは、上級品の絹を産むとも言われています。

一方ヤマグワですが、こちらの葉は、マグワに比べてやや硬め。
なので日本では自生していて手に入りやすいのですが、これを食べさせるとカイコの成長が遅くなり、絹糸生産までにやや時間がかかるというのが難点。
つまりヤマグワは、カイコの飼料としてはやや劣ると言えます。

なので養蚕の多くは、マグワを主体に、寒さに強いヤマグワをもしもの時の補助食として栽培していたようですね。
桑畑

二つの違い

これは難しいんですが、あえて挙げれば以下の点でしょうか。

①樹皮:マグワは縦筋が入る、ヤマグワは縦に裂け目が入る。
②花柱:マグワは実に花柱(メシベの紐のような出っ張り)がほとんどない、ヤマグワは実に花柱が目立つ。
桑の実

桑の実
③葉:どちらも葉の渕に鋸歯(ギザギザした部分)があるが、マグワは鋸歯の先が円く、ヤマグワは尖っている。
桑

☆桑の栄養価

桑の毒

そして桑が持つ秘密に迫ってみます。
まず、桑には昆虫から食べられないための仕組みを持っています。

それがどういうことかと申しますと、葉や枝を傷つけると乳液がにじみ出てくるんですが、これが毒(対昆虫)なんですね。
自分の体を守るために出すアルカロイド系の物質なんですが、これをなんとカイコは食べて分解するというのですから、これも凄い話です。

桑樹液

農業生物資源研究所 – クワは乳液で昆虫から身を守る – 植物の乳液に農薬・医薬の宝庫としての可能性 – (affrc.go.jp)

桑の栄養比較

そして桑の葉の栄養。
カイコが、他の植物からでは良い絹糸を出すことができないんです。
では、桑の葉の栄養は何か?

健康食品会社の同量での比較データがあったんですが、これが面白い。
食物繊維でいうと、キャベツが2、ブロッコリー4.5、ゴボウ6、それが桑の葉では33。
物凄い分量の食物繊維量です。

そしてカルシウム。
牛乳が150、煎茶490、干しエビ1500、そして桑の葉が2650。
煎茶のカルシウムが思ったより多いのも驚きですが、こちらは乾燥葉を全部食べた場合だと思われます。
そしてこちらも桑の葉のカルシウム量の多さに驚かされます。

そして健康飲料としてお馴染みの青汁。
その原料のケールと桑の葉の比較。
桑の葉の各成分を100とした場合ケールの数値は、というのが以下。
カリウム20、鉄8、マグネシウム18、亜鉛18、ビタミンB1が19、ビタミンB2が0
そして先ほどのカルシウムや食物繊維では、共に10となっています。
青汁

☆余談

このように見てきますと、分かりますよね。
シルク文化を支えた大きな秘密が、桑という植物にありそうなこと。
そして桑の栄養を最大限に取り出すように、クワコからカイコが生み出されたことに。

桑の実は、マルベリーとも呼ばれて私たちの食べ物として親しまれていますし、漢方薬としても全草利用されています。

樹皮は和紙の原料にもなりますし、葉は健康茶としても利用されています。

そして記録!
なんと、桑が花粉を発射する速度は植物界最速の、音速の半分らしいです。
桑の花

という事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳い一日をお過ごしくださいませ💐😊

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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