色の進化史:自然からの癒しと調和

色彩 命の不思議
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< 視覚:自然界につながる色彩より続く

☆緑色に特化した私たちの目

・目~緑色に敏感な器官

可視光線は、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫といった色彩で構成されてます。
これらはすべて人間の目で感じられる光です。
この中で私たちの脳は、特に豊富な緑色のバリエーションを見分けるのが得意なんです。

そうなった理由が、進化の道筋です。
古くから、地球上の多くの自然環境では、緑色は植生の主要な色でした。
そして霊長類が、緑豊かな森林で生活していたことは、化石記録や生態学的データからあきらか。
つまり、その環境では、緑色を識別する能力は生存に不可欠でしたから。
色彩

・目の機能として

目が色を感じるのは、コーン細胞があるからと書きましたが。
人では3種類があります。
それは、S型(主に青に反応)、M型(緑に反応)、L型(赤に反応)でした。

それぞれのコーン細胞が担当する光の範囲(波長)は以下の通り。
S型(短波長)コーン細胞: 主に400nmから500nmの範囲
M型(中波長)コーン細胞: およそ500nmから600nmの範囲
L型(長波長)コーン細胞: 約560nmから700nmの範囲

コーン細胞

錐体と色覚 – 神経科学 – NCBI Bookshelf (nih.gov)

その中でも、人間の視覚が最も敏感に、そして強く反応する色の波長がM型です。
つまり緑系の色。
つまり人の眼は、科学的に見ても緑系の色を最も鮮明に感じ取る能力があると証明されているんです。
色彩

・M型コーン細胞

ところで、人間の目が緑色に敏感であるのは、進化的要因と色感度の両方によると言えます。

まず進化の過程で、自然環境での栄養と安全に直結する、緑色光に対する感受性が発達しました。

その事が、M型のコーン細胞(M錐体)の、緑色光への敏感さとして現れたのです。
これの働きで、私たちは微妙な変化の緑色までを識別できるということなんですね。

カリフォルニア工科大学での研究でも述べられていますが、「色に対する私たちの反応は進化の名残り」という事なんです。
色彩

☆どうでも良い色だった「緑」

・大事なのだが、とてもありふれた色

これほど、進化的には超重要な色であったにもかかわらず、緑は一面で、どうでも良い色として扱われてきたことも挙げておきます。

つまり、生きる上で私たちにとってとても大事な空気や水。
これに毎回感謝して暮らしている人は少ないですよね。
特に先進国においては。
その理由は簡単です。
常にそこに在るからです。

どうやら私たちは、在って当たり前のものには感謝しないようです。

緑(植物の色)に対してもそうです。
緑色が祖先の環境において一般的で「普通」の色だった時代。
この時代は相当長いんですが、周囲が緑だらけで意識上は全然ありがたくない。
在って当たり前ですからね。
色彩

・ちなみに、青の話

もちろん、色の好みは文化によって異なるんですが、そんな中で「青」は世界中で好まれる色です。
これは青が、空や水の色として、生命にとって不可欠であることに関連しています。
青空は、世界のどこでも目にすることのできる自然ですから。

それに引き換え、同じ要素の「緑」では、国によっては元々豊かでない場所もあります。
寒すぎたり、乾燥しすぎていたりで。
そしてもう一つ、「青」と「緑」では性質が違うんですよね。

これは私の考えなんですが。
空の青、水の青は人類が支配できない存在です。
生物的な命も宿っていませんから。

それに対して緑は、人類が征服できる対象です。
そして植物体と言う形での命をもった生き物の世界の色ですから。
色彩

☆緑は、いつから大切な色となったのか?

・色彩心理学では

こうして人類にとって長い間、大切ながらもありふれた色だった緑です。
ところが、現代では緑は癒しの色だと広く知れ渡っています。

色彩心理学と言うものあります。
2000年代初めに、アメリカで生まれた学問ですが。
これは色に関連付けて、人の心を研究する心理学の事です。

この学問では、各色が持つ心理的影響・生理的影響・感情への影響・文化への影響について解き明かし、私たちの生活や心のケアなどに活かしていくという事を目的としています。

さてこの色彩心理学では、緑を以下のように分析しています。
緑~自然を連想させ、心を癒す色。
また、リラックス効果と鎮静効果を併せ持つ色。
それで健康と新鮮さを表し、生長を表す。うつ病を緩和し、自制心を与えるなど。
色彩

・緑が、ありふれた色だった時代

さて、緑がありふれたものであった時代は、空気や水と同じく、有り難いものだけれど特に意識しなくてもよかった時代です。
普通に生きていても、人々の周囲に豊かな緑がある時代ですから。

その頃は、特に取り立てて大事な色ではありませんでした。
では、現代のように緑が意味を持って大事な色の一つに言われるようになったのか。
ここが気になります。
そこはやはり、都会暮らしの人々の周辺から、豊かな自然が消えていった時代でありましょう。
自然風景

☆緑の転機~レイチェルカーソンの沈黙の春

しかし、緑は大切なものと認識されている今日では癒やす色としてのイメージが強くなっています。

このきっかけとなったと言われているのが、1962年に発売されたレイチェル・カーソン著「沈黙の春」でした。
マインドフルネス
この本は、環境保護に関する画期的な作品で、農薬の過剰使用が自然界に与える壊滅的な影響を科学的根拠に基づいて議論。
特にDDTなどの化学物質が生態系に及ぼす害に焦点を当てています。

カーソンの鋭い洞察と詳細な調査により、人々の環境に対する意識が高まり、現代の環境運動の先駆けとなりました。
その後の環境保護法の制定に大きな影響を与え、今日でも環境問題に対する重要な参考文献とされています。

こうして、失われゆく自然に意識が向けられるようになった現代で、緑は、癒やしの色としてのイメージが定着したのです。
沈黙の春

さて、本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳い一日を💐

< 緑色の秘密:古代から現代への歴史へと続く

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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