☆師匠の形見の石楠花
エイプリルローズ
私の師匠から頂いた植物があります。
アメリカで生まれた石楠花(しゃくなげ)で、その名も、エイプリルローズ。
もう私も歳だから、これまでみたいに沢山の植物のお世話が出来なくなったよ。
だからこれはあなたにあげよう。
そうして4月にいただいた、エイプリルローズ。
師匠はそれから一年後に旅立たれました。
それから文字通り、4月の中旬から5月の初めにかけて、約束のように花を咲かせてくれています。
余談ながらこの花の親は、(カロリヌナムグループxムクロヌラタム ‘コーネルピンク’)x(白花ダウリカムxダウリカム)。
江戸園芸に精通した師匠から、アメリカ産の石楠花だなんて不思議に思われるかもしれませんね。
ところが江戸園芸には、広く外国の物を取り込もうとする情熱的な一面もあったんです。
師匠は最後まで、背中で私をご指導くださっていたのだなぁと、改めて感じるのもこの花からのメッセージでしょう。
☆取り木
木を増やす方法の一つ
そのエイプリルローズが、伸びすぎてきました。
そこで、普通は剪定(せんてい)と言って、刃物で途中から切って背丈を短くするのです。
ところが、形見でしょう。
切り捨てるのは忍びない。
そこで、取り木をやることにしました。
取り木というのは、樹木を増やす方法の一つです。
感嘆に申しますと、樹木を切りたい部分(枝や幹)からまず根を出させて、それからその根の下から切って、その切ったものを地面や鉢に植える方法です。
こうすると、元々根っこが生えて茂っていた本体はそのまま。
そして幹や枝の途中から根を生やしてきた部分は、そのままもう一つの生物として活動を始めます。
こういうのができるというのも、植物の凄さの一面ですよね。
取り木ステップ① 環状剥離
では実際に、昨日行ったエイプリルローズの取り木を、写真多めでお伝えいたします。
まず、こんな感じで伸びていました。
鉢物ですから、根っこの広がりは鉢の中に限られています。
それなのに、地面より上の部分だけ好き放題に伸ばし育てると、需要と供給のバランスが崩れて枯れやすくなるのです。
そこで、向かって左側の、ひょいと伸びた幹の6割ほどを切ろうと思いました。
決めたポイントから約5cmの幅で、幹を一周グルリと、写真のように表皮をはがします。
表皮と言っても、一番表面の茶色い部分だけではなく、気持ち深い部分の緑がかったところまで、慎重にはぎとります。
それを幹一周です。
これを専門用語で、環状剥離(かんじょうはくり)と言いますが、覚えなくていいです。
皮をはぎとった状態のままだと、そこからどんどん水分が失われて、木自体もそこから傷んできますので、処置は早めにやっていきます。
本当はこうして写真を撮っている場合ではないのですが、ごめんねエイプリルローズ。
取り木ステップ⓪ 水苔(ミズゴケ)
さて、話の流れは一度ここで止めて、大事な話。
実は木の皮をはぐ前に、準備があります。
2時間ぐらいかかるので、前もってこれは、取り木に取りかかる前に済ませておくことが大事です。
今では100円ショップでも売られている水苔。
これはなるべく、色の薄い、白に近いものを選ぶように心がけてください。
取り木する場合には、の話です。
そしてこの水苔を片手に軽く乗るほどに取り出し、ほぐして、容器に入れます。
ここに、水苔がヒタヒタに浸かる程度に水を注ぎます。
ときどき水苔を揉んで、2時間ほどしたら使えるようになります。
この容器を、取り木する現場まで持って行って、使う時に取り出して片手で軽く絞ってください。
取り木ステップ② 仕上げ
話は戻りまして、ステップ①のラスト。
この、皮をはいだ部分に、軽く絞った水苔を巻き付けます。
傷がしっかり隠れるように。
これは、人の怪我を同じ考えで構いません。
覆う部分は、傷口より大きめで、です。
水苔で覆ったら、すぐにラップかビニールで、さらにしっかりと覆います。
そしてその覆いの上と下を紐などで、幹に縛り付けます。
それが、こういう感じになります。
私の場合は、ラップを使ったので、真ん中が開きそうでしたので、さらに、下から上へ向かって軽めにグルグル巻き縛りをしました。
これで幹の上の切れ目あたりから、数ヶ月後にはしっかりした根が出てくるはずです。
根が出ているかどうかは、ビニールやラップ越しに見えますので、そこで確認します。
ただし、根が出てそれがしっかり覆いの中でたくましく増えるまでは、覆いを取らないでくださいね。
これが、植物を増やす方法の中で、取り木と言われているやり方。
厳密に申しますと、取り木の中でも、高取り法と呼ばれているものです。
ではおしまいに、始めと終わりの比較写真を載せて。
ビフォー&アフター。
という事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐