桃の節句

ひなまつり 喫茶~言の葉
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☆ひな祭り:上巳の節句

今日は楽しい雛祭りです。
五節句の内の一つですよね。
そこで、この日に関わる植物達について、軽く眺めてみました。
上巳の節句

なぜ蛇??

おせち料理の回で書きましたが、3月3日は上巳(じょうし)の節句です。
上の巳。
この巳とは、蛇のことです。

え~~、ひな祭りなのになんで蛇?とお思いの方もいらっしゃるでしょう。
昔はこの日、女の子に蛇を贈ったのです、嘘です。
そんな訳はない。
へび

実はこれ、元々陰陽道の言葉です。
三月の一番初めの「巳の日」のことを言いました。
この日は「陰の極」というもので、大変な忌み日だったんだそうですよ。

忌み日とは、物忌み。
つまり、日常的な事を避けて、穢れを避ける日なんです。

そんな考えも陰陽道と一緒に日本に伝わりました。
陰陽

なぜ雛人形??

物忌みの日です。
派手なことはできません。
慎ましやかに、息をひそめて過ごす日だったのですから。

そうやって静かに過ごす日だったのですが、どうもそれだけでは心もとない。
もし何かの拍子に穢れ(ケガレ)が我が身に降りかかるかもしれない。
そんなふうに、日本人はどこか心配性なのかもしれませんね。
穢れは、気枯れですから、今、私たちが思うより非常に嫌な事だったんです、昔の日本人にとって。

そこで、この日に一切の厄や穢れを祓うんです。
祓い清める、この思想がとても大事な日本人の根本にあるんです。
余談ながら、祓い清めるを表す色が、白です。

なので花嫁さんが白無垢を身に着けるのだし、人生の最後も白の衣装を身に着けるのです。
ロウソク 魔除け 厄除け

さて、その祓い清めには人形を使いました。
この場合「にんぎょう」ではなく「ひとがた」と読みます。
まず人形(ひとがた)を作って、それに自分自身の厄や穢れを移して、川や海に流したのだそうです。
雛祭り 川
この時、どういう素材で作られていたのかと言いますと、おおよそ草木だったみたいです。
それ以外は沈みますからね。
流れなくちゃいけないですから。
その名残が、藁人形です。

そして先ほど述べました人形が、時代と共に「紙雛」になり、そして徐々に現在のステキな雛人形になって行ったといいます。
紙雛

☆桃の節句

もともと上巳の節句は、年齢性別問わず、全体の穢れを祓う日だったんです。
ところが、時代と共に端午の節句が男の子、上巳の節句が女の子のものと様変わりしました。

この日は忌み日でした。
だから人形の他にも、何重にも祓い清めの手段が組み込まれているんです。

例えば、桃の花。
桃については、下記の記事に書きましたので、そちらもよろしければご覧ください。
< 桃の話
桃

この桃の話にプラスすると、ひな祭りには白酒を頂きますよね。
さてこの白酒、本来は桃白酒なんです。
桃白酒がどういうものかと申しますと、白酒にこの時期に咲く桃の花を浮かべたもの。

そして、上巳の忌み日に桃白酒を飲む理由は、体の内側から邪気や穢れなどを追い出すためなのです。
本来は、甘酒ではなく桃の花を浮かべた酒です。
子供は飲めませんよね。
つまりここも、かつて桃の節句が老若男女関係なく、生きとし生ける人すべての節句だった名残りであります。
白酒

☆その他の祓い清め

ヨモギ

ヨモギは古くから、魔除け、邪気を払うという面でも使われてきた野草です。
あの香りの強さが、そういう方面にも良いとされていたらしいです。

それが、上巳の節句とどういう関りがあるかと申しますと、ズバリ、ヨモギ餅です。
ヨモギを体内に採り入れて、内側から邪気を払うというやり方ですね。

ちなみに、ずっと古い時代では、ハハコグサが使われていたようです。
それが鎌倉時代になってから、ヨモギになったという事です。
よもぎ

ハマグリの吸い物

ハマグリは二枚貝。
それでその二枚の貝殻と言うのは、元々の個体の貝殻同士でないと組み合わせられません。
違う貝同士の貝殻では、ピタリと一つにならないんですね。

その性質を利用して、平安貴族の間で流行したのが「貝合わせ」と言う遊びです。
二枚貝の貝殻を「出し貝」と「地貝」という二組に分け、それぞれの組に計360個のハマグリを持ちます。
そして地貝360個を伏せて全て並べます。

そこに出し役と決められた人が、出し貝桶から一つ、出し貝を中央に置く。
その出し貝にピタリと合うと思われる地貝を、周囲の人が競争して選んで一つだけ選ぶ。
それで、出し貝と、一つ選んだ地貝が合ったら、その一対の貝を自分の前に置く。
最後には、どれだけ多くの正解を出したかで勝者が決まるという遊びです。

ここから、将来、ピタリと合う結婚相手に出会いますようにという願いが込めて、上巳の節句にハマグリの吸い物を頂く風習が残っています。

ちなみに、ハマグリの漢字は、虫偏に合うで、蛤です。
この虫ですが、昆虫と言う意味ではありません。
昔々は、蟲と書きました。
これは、生き物すべての事です。
貝は、介蟲と書きました。
そして人は、裸蟲です。
そんな時代の名残りの漢字ですね、まぁ余計な話でしたが。
蛤

菱餅

菱は、縄文時代から食用とされていた植物です。
水草で、繁殖力旺盛。
なので、その生命力を取り込み、子孫繁栄を願うために、上巳の節句では菱餅を作りました。

菱の鬼皮(硬い皮)を取り除き茹でます。
そうすると、栗やイモのように、ほくほくとした感じになるんです。
色は、うっすら赤茶色味がかった白。
それをもち米と一緒に混ぜてついてできた餅が、菱餅です。

ここにヨモギ餅を加え(緑)そして明治時代にはクチナシの色を加えた赤餅が加わり、今よく見る三段重ねの、いわゆる菱形の餅になりました。
余談ながら、クチナシ色の餅は、を表すそうです。
これもまた、魔除けの植物ですよね。
菱餅

ひなあられ

元々は、めでたく魔除けにもなる菱餅を、子供が外に出て遊んでいる時にでも食べられるようにアラレにしたのが始まりだと言います。
携帯用、魔除けの菱餅という感じですね、元々は。

そう考えると、菱餅も愛しいものです。
ひなあられ

ちらし寿司

そして、このちらし寿司、こちらは江戸時代に流行り始めた風習だとか。

パッと派手にみんなでワイワイと食べられるのが、江戸っ子気質に合っていたのでしょうか。

例えば、エビを入れるのは、腰が曲がるまでの長寿を願って。
だとか。
豆を入れるのは魔滅につながるから。
だとか。
レンコンを入れるのは、極楽に咲く花だから。
だとか。

そういった色んな理由を付けられています。
つまりこれは、世の中が安定して豊かになった時代にできた風習と言えるのです。
もう少し詳しく申しますと、これは食材が安定して手に入るようになった江戸時代の安定の証。
こうして風習の中に、各時代が反映され、伝えられている。
だから、大切にしたいですね、こういった季節の行事は
ちらし寿司

ということで本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳い雛祭りになりますように🎎🍡🌸

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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