☆七夕(しちせき)の節句:たなばた
昨日の小暑に続いて7月7日は、七夕です。
この七夕も、読み解くにはほんの少々入り組んでいまして、、、。
では、長くなりそうなので、早速紐解いてみましょうか。
織姫と彦星
七夕というのは、天の川に隔てられた織姫と彦星が年にこの日だけ会えるという日。
その織姫は、こと座のベガという星です。
織姫という名が付いているので分かる通り、裁縫を司る星(神様)とされています。
やはり、衣食住のうちの衣ですからとても大事ですよね。
そして彦星は、夏彦星。
わし座のアルタイルという星で、農業を司る星(神様)とされています。
なので、繊維(衣類)と農業とを同時にお祝いする節句なのです。
これは想像ですが、この時期から秋の収穫にかけて、農業の大詰めです。
なので豊作への願いが込められているんでしょう。
では、繊維は?
私が思うに、収穫物を入れたり運んだりするための丈夫な布。
そして秋から冬にかけてのしっかりした衣類が得られるための願いが込められているのではないでしょうか?
そう考えると、織姫と彦星のこの時の邂逅が、また違って見えてきますよね。
星まつり
ところで、私の実家。
九州の田舎で、当番のおじいさんが夏になると「はい、星まつり」とお札(ふだ)を各家に配っていました。
それを頂いていくらかの代金を払うのですが、それが何かも分からず、ただ「星まつり」の名前の響きにウキウキしたものです。
今になって分かるのですが、これは旧暦の七夕のことで、農業に深くかかわっています。
また、私の古里では、養蚕(カイコ)が盛んでした。
カイコが創り出すのが絹糸です。
ですからおそらく、星まつりというのは、近隣の同じような集落よりも重要視されていた気がしてなりません。
また、山岳宗教が盛んな土地柄でもありましたので、禍を防ぐという星供養の意味合いも混じっていたのかもしれません。
先日電話してみましたが、時代は移りますね。
ふるさとの今の世代の人たちは、かつてここにあった星まつりの事を誰も知りませんでした。
たなばた
では、七夕と書いて、なぜ「たなばた」と読むのでしょうか。
これは、七夕(しちせき)の節句に願うのが、裁縫上達であったり(こちらも、冬に向けての丈夫でよい衣類を作ることができますようにという願いではないでしょうか)、織姫と夏彦星との一日だけのしあわせな再会であったりするためです。
織姫は、裁縫を司る星と書きました。
そこで、日本の神事と重なります。
それは、棚機。
棚機と書いて、これを「たなばた」と読みます。
そして繊維を織り込む機械を「機(はた)」と読みます。
だから、機織り機(はたおりき)。
どうも日本語の音として、薄くひらひらした繊維質の物を「ハタ」言っていたみたいですね。
だから、旗という文字もそうです。
余談ながら、機という文字は面白く、こういった布を表すかと思えば、①からくり(機械)②重要な事(機密)③切っ掛け(好機)④心の働き(機転)⑤罠(機陥)などのような意味合いに使われます。
これらは多分、複雑に入り組んだ繊維を組み分け編み込む機織りの絶妙さから派生したもののように私は考えています。
では、棚機とはなにか?
これは神事なんですね。
機織りの乙女が仕上げた衣類を神棚に捧げ、秋の豊作を祈り、穢れを祓うというものです。
この棚機(たなばた)神事の読みを、七夕(しちせき)に当てたので、今では普通に七夕をタナバタと読むことが定着しているんです。
☆笹の節句
そしてこの七夕の節句は、別名が笹の節句です。
ではこの笹について考えてみましょう。
笹が持つ意味
竹や笹と言った植物は、中が中空ですよね。
だから日本では古来より、その中空の部分にカミが宿るという思想がありました。
カミと片仮名で書いたのは、神と言うより自然の精霊も含むイメージ。
だから神秘的なかぐや姫も、竹の筒の中に居ましたよね。
自然の空洞は、それ自体が何か宿ってそうな祠(ほこら)ですし。
つまり笹自体がカミの宿る依代(よりしろ)であり、それに願いを書いた短冊を吊るして星空に捧げるのは、それ自体がマツリ(祭り、奉り)であるためです。
その依代がメインでもあるので、笹の節句という名になったのだと私は考えます。
また笹はまっすぐに伸びるので、より神性を表すと捉えられていました。
そして、古代より邪気払いの力があると。
軽い風が吹いても、笹の葉は、心地よい葉擦れの音を出します。
これがまた、邪気を払って、カミを呼ぶものとして考えられていたようですね。
音ってのは、古い日本ではとても大事なものでした。
太鼓の音も、拍手(かしわで)も、言葉も、元はとても神聖なものだったのです、これはきちんと資料が残っております。
七夕と陰陽五行
そして笹飾りにつける短冊。
これも色が本当は決まっています。
それは陰陽五行の青・赤・白・黒・黄の五色です。
この陰陽五行については、前にも書きましたので、もう少し詳しく読みたい方は以下をご覧ください。
< 日本の伝統色について
つまりこの五色を使う事によって、東西南北と春夏秋冬を表し、その中で中央食の黄色がこの場合は笹の節句を意味していると思うんです、いえあくまで私の意見。
そう考えると、短冊も深いですね。
また、他の飾り物にもそれぞれ意味があります。
ただそれを全部書くと長くなるので、それは別の機会に回しましょう。
☆天の川を体内へ
行事食
七夕の行事食は、素麺(ソウメン)です。
やはり、時候に合った食べ物ですね。
で、この素麺。
これは天の川を表します。
つまりここでも、星まつりの意味合いが見て取れます。
あの雄大な天の川を体内に取り込むと思うと、なんだかガンバレそうな気がします。
しかも年に一回のこの日にしか、天の川は取り込めません。
そう捉えると、七夕は素麺一択じゃないでしょうか。
しかも星の見える夜に。
カササギ
それと、織姫と夏彦星が天の川を渡るために橋が架かりますが、それが鳥のカササギです。
羽を拡げると、天の川に架かる橋になるのですから、こちらも雄大です。
大元は、道教あたりから出てきた話らしいです。
実に頭の良い鳥で、鏡に映った自分を自分だと分かると言います。
確か韓国では、縁起の良い鳥とされているようですね。
こうしてわざわざカササギをここで取り上げたのは、私が好きな鳥だからです。
どうです、この一枚。
鳴きまねしてたら、興味津々で近づいてきてくれました。
梅雨時期で見えない天の川の謎
ところで7月7日といえば、まだ本州は梅雨の所が多いですよね。
最近では豪雨被害も多くなってきています。
そんな中、笹を飾って浴衣来て夜空見上げてって、時期的にどうよ?という感じです。
また七夕は、秋の豊作を願いつつ、秋から冬への寒くなる時期に衣類に困らないようにという願いが込められた節句だと書きましたよね。
しかし昨日は小暑で、これから夏本番に向けて暑くなると書いたばかりなのに、翌日はもう冬に向けての願いって、どうにも変です。
じつはこれには理由があります。
本来の五節句はすべて、旧暦(太陽太陰暦)日付で考えるのが正しいです。
ところが7月7日の日付だけを見て、それを新暦(太陽暦)に当てはめると、梅雨で星空が見えづらいし、冬の衣類の心配だなんて変テコってなっちゃう。
なので、本来の意味での笹の節句(七夕)という事になると、今年の本当の七夕は8月10日になります。
つまり、8月10日が、旧暦で言う7月7日。
それで立秋が8月7日なので、梅雨も終わって星空がキレイで、お盆前でやがて涼しくなるころという訳なのです。
という事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐