☆栃の実の生存戦略
栃の実が3つ芽を出したこと
4月26日に芽を出した我が家の栃(トチ)の実。
あれから更に二つも、芽を出しました。
芽と芽の間隔はだいたい20㎝でしたので、これでは密集しすぎです。
そこでそのうちの二つをそっと掘り上げてみました。
それがこちら。
芽が地面から出ている芽が、根っこに比べて長いですよね。
実際はもっと根っこが横に拡がっていたんですが、3割ほど切れてしましました。
というのも、植えていた場所がひどい土地で、石がゴロゴロ。
あまりに石が多くて、移植ゴテも5cmほどしか入らない状態。
そんな土地なのに、栃の実の根っこはそういった砂利のスキマを抜けて、横に縦に伸びていたんです。
なんという逞しさ!!
栃の赤ん坊は、冬の寒さが大嫌い
こうして自分の手で植えてみると、色々と分かります。
栃の実は、逞しい。
実際、私が実を植えてそのあとやった管理は、水やりだけ。
しかも秋に植えた後、3回ほどのみ。
たったそれだけで、荒れた土地ながらもきちんと芽を出してくれたんですから。
この生命力、素晴らしいですね。
ところで栃の実が芽を出すためのスイッチの一つに、「気温差」があるようです。
秋に実が落ちて、寒い冬を一度過ごすことが合図となって、暖かい春になると芽を出す。
つまり一度、寒い時期を一定期間過ごさなければ芽を出す気にならないという感じ。
多分、秋に落ちてすぐ芽を出していたら、その後に来る冬にまだ柔らかい芽が耐えられないという事なのでしょう。
自然の仕組みって、本当に精細で複雑で不思議ですね。
栃の木、親離れ子離れ
ところでこの芽ですが、頭をもたげてから一気にグンと伸びてきました。
キチンと計ってはいませんでしたが、一日に1cm近く伸びたこともあったように思います。
この急な伸びは、基本的に森の中に生える栃の木の生存戦略なんです。
春先に、まずは一気に伸びて、他の草木が茂る前に発芽直後に少しでも光を取り込もうという戦略。
これは、スプリング・エフェメラルと同じ作戦です。
という事は、この最初の伸びの原動力は、実が最初に持っている栄養だけが頼り。
まず、昨年秋までに親木からもらったその栄養の貯金みたいなもので、春先だけ他の植物より優位に立とうとします。
そして次に、実の栄養が切れる前までに自分の葉を広げて根を広げて、自分自身で栄養を作り始めるためになるべく高い位置で葉を広げ、根をシッカリさせるという事ですね。
という事は、栃の実が迎える最初の春にどれぐらい光と栄養が蓄えられたのかという事が、その後の生長に大きく関わってくるという事なのでしょう。
ああ、こういうのは、人の親離れ子離れと同じだなぁと、私は見ていて愛しく思います。
色の秘密
それとこちら。
先に芽を出した栃です。
それと、こちら。
次に遅れて芽を出した栃。
この二つの違いは、木肌の色ですよね。
同じ木なのになぜこうなるのか?
不思議に思われません??
これには、アントシアニンという物質が関わっています。
アントシアニンは、赤い色素。
そして、抗菌作用や害虫の幼虫を寄せ付けない効果があります。
なので大事な新芽の時期が赤いんです。
それと、アントシアニンの赤は、葉の温度を高くする効果があります。
まだ寒い春先に植物の体や葉の温度を上げて、少しでも早く生長するための工夫なんですね。
人で言えば、イメージ的には離乳食という感じでしょうか。
そして、このアントシアニンは、植物が栄養を作る働きである光合成をおこなう主役の「葉緑体」を発達させる働きをするんですね。
そして特に、今まさに発達している最中の葉緑体を、紫外線の破壊力から守る働きをする色素なんです。
なので、芽が出て間もない栃の木は赤っぽく。
数日先行して育っている栃の木は茶色に落ち着いているという事です。
余談ながらこうしてみると、人もそうですよね。
紫外線から身を守るために、メラニンを表皮に集めて壁を作った結果、皮膚が焦げパンみたいな色になる。
そう、日焼けの仕組みです。
やはり、色と太陽光は切っても切れないご縁のようで。
☆その後の栃の実
さてこうして掘り上げた栃の実がどうなったか。
気になる方もいらっしゃるかもしれませんので、ご報告しておきます。
クラスの理科の教材として育てたいという先生がいらっしゃいましたので、そちらへプレゼントしました。
大丈夫です。
ちゃんと植え方もご指導させていただきました。
ただどうしても外植えという訳には参りませんでしたので、大きめの鉢に植えました。
その後も順調に育っているようですよ。
残り一株の我が家の栃の木(三男坊)は、まだ赤い肌ですが、こちらも元気に育っております。
木陰ができるので、夏の高温対策に役立ってくれるものと、今から楽しみです。
あ、そうそう。
最後のこの写真は、昨日歩いた森の中。
ドングリが自分から地面に根を下ろしている最中の様子のもの。
こちらも赤く頑張っておりました。
という事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐