☆おとそ気分
今朝、ご近所の方にご挨拶てましたら。
「いやぁ、昨晩まで飲んでましてね。まだ御屠蘇(おとそ)気分が抜けなくていけませんなぁ」と仰っていました。
聞けば今日が仕事始めだとか。
そうですね、休み明けの仕事は普通でも大変。
なのでお正月休み明けとなると本当に体や頭が動かないものです。
お察しいたします、私もそうでしたから。
ところで、御屠蘇気分。
これは正月のユッタリのんびり過ごした心持の事です。
ところが、この「御屠蘇」を、お正月に気持ちよく飲んだお酒の事だと勘違いしてらっしゃる方も存外多い。
そこで今日は、これについてのお話。
☆日本酒と、お屠蘇は別物です!
御屠蘇、お屠蘇とも書いたりしますね。
このお屠蘇、年の始めにいただく薬酒の事です。
なんでも唐から伝わったものだそうでして。
なので、日本酒とは違うんですね。
私の知り合いでビールで乾杯しながらお屠蘇いただきま~すだなんて嬉しそうにしている方もいらっしゃいましたが、もうおかしいやら楽しいやら。
でも、どんな形であれ、楽しいお酒という物は実にこう、こちらまで嬉しくなるもんです。
名前が示す通り、屠(ほふ)って蘇(よみ)がえらせるのが、この薬酒の本来の目的。
とても呪術的ですね。
じゃあ、何を屠るかと言えば、鬼や邪心を屠るんですね。
あとはおそらく、昨年までの悪い運気も。
それから蘇らせるのは何かと申しますと、これは己の生命力や良い運回りの事です。
ところがややこしいのは、もう一説あって。
これは「蘇」というのが鬼の名前だというんですね。
そこで、鬼の蘇について調べたんですが分からない。
☆死と再生
お屠蘇が仮に、悪鬼の「蘇」をやっつけるためだけの薬酒であるとしたならの話ですが。
その意味だけなら、どうも狭いんですね。
古くからの日本人の自然観では、「死と再生」という価値観が根強いんです。
やっつけるだけでは、なんだかね、という感じがします。
屠蘇は文字通り「死と再生」ですもの。
じゃあやっぱり鬼の蘇はおかしいと私は思います。
ちなみに、古くからの日本人の捉え方でいうと、私たちの毎晩の睡眠は「仮の死」なんです。
私たちは、毎晩死んで、毎朝生まれ変わってる。
そう考えると、苦しいことも辛いことも嫌なことも、その日限りであって、吹っ切って生きていける気がしませんか?
まぁこれは余談でしたが。
☆正しいお屠蘇
・いただく手順
ということで、おそらくお屠蘇は、嫌なものや負のすべてを屠り、自分の生命力を蘇らせる、つまりリフレッシュさせるものと言えるんですね。
ではこのお屠蘇、いつ頂くかと申しますと、元旦の始めです。
年が明けて、その場の年長者が汲んできた水、これを「若水」と申しますが。
若水で手を清め、それからお屠蘇を頂くのが正しい手順です。
おせち料理を頂く前に行います、なので年が明けて早々ですね。
そこで年長者から年少者へ、三々九度のようにお屠蘇を注ぎます。
そしてこう唱えます。
「一人これ飲めば一家に苦なく、一家これ飲めば一里病なし」※諸説あり
言霊ですね。
・お屠蘇の作り方
ではお屠蘇とは、何からできているか気になりますね。
これは、日本酒と味醂(みりん)に、決められた生薬を混ぜたものです。
この生薬には、白朮・桔梗・防風・肉桂・陳皮・赤小豆・茴香・山椒・紅花が含まれています。
これらは「屠蘇散」として、薬局でも販売されていますから、手軽に入手できますので御安心。
さて作り方。
①まず日本酒と味醂を好きな割合で、計300mlになるように混ぜます。
基本は1:1
②そしてそこに、屠蘇散を一包、浸します。
そして5~8時間放置。
③時間が来たら、屠蘇散の包みを取り出して完成。
簡単ですよね!
☆屠蘇のまとめ
さてこのお屠蘇。
新年にこれまでの邪気などを屠り、私たちの生命力を蘇らせるきわめて呪術的な飲み物ですが、材料がほぼ全て植物由来なんですね。
日本酒の酒米+コウジカビ。
味醂のもち米+コウジカビ。
生薬植物9種。
これらの植物の生命力や呪力(もちろん薬としての側面も)を体内に取り込んで、死と再生を起こしマッサラな心持で新しい年を生き抜いていくという願いが込められたものと言えるでしょう。
やはりこういう風習は、大切に残していきたいものですよね。
あ、そうそう。
コウジカビのことを最後に少々。
蒸した穀物に、コウジカビを混ぜて微生物発酵させたものが「麹」です。
穀物には麦や大豆もありますが、米を使った場合には米麹とも言いますよね。
この米麹。
江戸時代に、こめへんに花で「糀」と書いたそうですよ。
ということで、本日も最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き日でありますように💐