☆藤に不如帰
< 「花札の簡単な歴史」についてはこちらをクリックされてください。
卯月の四枚札
今日から旧暦では四月に入ります。
という訳で、花歌留多(花札)の卯月(四月)の札の図柄と意味のご紹介です。
卯月の四枚札は、以下の通りです。
図柄は、藤の花、不如帰(ホトトギス)、欠けた月、赤短冊。
では以下、それぞれにどういう意味合いが含まれているのかを見て行きましょう。
カス札
四月のカス札の図柄は、藤の花です。
藤はツル性の植物。
森の中では大きな木に絡みついて育ち、やがてはその絡みついた気を殺してしまう事もある生命力の強い植物です。
鑑賞用では、棚を作ってそこに這わせて育て、藤棚にしたりしますよね。
この藤の花が満開になる頃、花札が表す季節の基準地である京都を含む近畿地方では、田植えが行われる時期であります。
四月の短冊札
花札全四十八枚中、十枚が短冊札。
四月にも一枚、この短冊札があります。
それがこちら。
これは赤い短冊ですが、花札では単に「タン」と呼びます。
そして赤タンというのもありますが、これは1~3月までの文字の書かれた赤い短冊札を指します。
余談ながら、花に添える短冊ですが、実際にこういう文化はあったみたいですね。
花札の図柄では、短冊が風を受けて少ししなっております。
それぐらい薄い紙だという事でしょうね。
なんでも、季節の花や植物と共に、茶席などで主人がその薄い短冊に気持ちや和歌をしたためて添えたのだそうです。
もしかすると、ですが。
そういう風流な世界を描き込んでいるのかもしれませんね。
四月の種札
花札全四十八枚の中に、動物や特殊な図が描かれた重要な札が九枚あります。
これを種札と申します。
四月の種札は、藤に不如帰(ほととぎす)です。
藤の花が咲くころに鳴きだす不如帰は、三月の「梅と鶯」と同じように古くから、藤と一緒に常套句として使われてきました。
藤波の 咲きゆく見れば ほととぎす 鳴くべく時に 近づきにけり
これは万葉集にある田村福麻呂の和歌です。
「藤の花が次々と咲き波のように風に揺られているのを見ると、いよいよホトトギスが鳴き始める時期も近づいてきましたね。」と言う意味です。
このように、藤の花とホトトギスとは、この時期の大きな季節変化を繊細にとらえた言葉ともいえると私は思うのです。
藤に不如帰の中に描かれた月
この月の種札の中には、欠けた月が描かれております。
ところが調べてみると、、、と申しましても、私が調べた範囲では、江戸時代あたりでも、藤に不如帰が描かれてはいても、欠けた月は描かれておりませんでした。
これはもしかしたらですが、明治~昭和にかけて新しく加えられた図柄なのかもしれません。
但し、この欠け方を旧暦見てみると、四月の終わりごろの二十八夜の月に似ております。
花札四月の言葉遊び
さて、この四月の花札にある言葉遊びは何でしょうか?
ポイントは、「じ」
一つは、藤の「じ」ですね。
もう一つが分かりづらいので、答えを書いておきます。
不如帰には別名が沢山あります。
その中に、時鳥というのがあるんですね。
読みは「じちょう」です。
そう。
藤のじ、と時鳥のじ。
この重なりが、花札四月札に込められた言葉遊びであります。
☆卯月
最後に、月名について。
陰暦での月の呼び方(和風月名)で、四月を卯月(うづき)と呼びます。
春も終わり、いよいよ夏の初めとなるこの時期。
植物は一斉に育ち始め、稲作もいよいよ本格的にあわただしくなってきます。
田んぼに苗を植えるので、植え月から卯月だとなったという説や、空木(ウツギ)の花が咲くので、卯の花の咲く月なので、卯月という説も。
又は、産み月や初(うい)月からという説など、諸説入り乱れています。
月名に植物由来のモノが来ているのに、花札では絢爛豪華な藤の花が来ているのも面白いことであります。
ちなみにこの藤から、日本人は服を作ったりカゴを作ったりヒモを作ったり。
生活に密着していて、しかも花の時期は華やかですから、四月花札の図柄には藤が最適だったという事なのでしょう。
と言う事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐😊