森の中の白い奴:木材腐朽菌

菌類の分解作用 命の不思議
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☆森散歩にて

雪解けの森

雪の下から顔を出した、折れた木。
そこには菌類がとりついて、せっせせっせと分解中。
菌類の分解作用
表面に見えてる分だけでも、白く元気ですが。
この白い菌は木材腐朽菌。
時に住宅を腐らせたりする菌で、場合によっては困りものですが、これが大変重要な働きと恵みを私たちに与えてくれるのです。

そこで今日は、木材腐朽菌についてのお話を少々。

リグニン

昔々。
水の中から陸上へと植物が上陸した時。
植物はなんとか地面の表面に這いつくばって生きる事しかできませんでした。
それがコケ類。

でも植物達は、競って太陽の光を奪うようになり、少しでも上に伸びた方が得だと知るんですね。
それで上に伸びて行ってもクチャリと潰れないため、自分の身体を固くする物質「リグニン」を生み出します。

このリグニンがあることで、木が生まれます。
リグニンを多く利用する植物が樹木で、種類によって高低の差はありますが、地表から高く立ち上がることができるのです。

そして花壇や草原にある植物達は、このリグニンを木よりも少なめに使っているからあの高さ止まりで、ハサミでも簡単に切れやすい微妙な硬さと柔らかさを持つに至っているという訳です。

ちなみに。
木がリグニンを持っているからこそ、私たちは家が建てられます。
樹木が命を失っても、リグニンはそのまま残るので硬さが失われないという仕組みです。
雪解けの森

リグニンと石炭

石炭紀と言う時代があります。
今から遡ると、約3億5,900万年前に始まり、約2億9,900万年前に終わった時代です。
実質この、約6,000万年にできたのが石炭です。

ではこの6,000万年間だけに、なぜ石炭ができたかと言う話ですが。

石炭紀が始まる前には、リグニンが無かったから石炭ができなかったんですね。
正確には石炭紀の前の、デボン紀後期あたりからリグニンを作りはじめる植物が出てきていたようですが、本格的に爆発的にリグニンが出てくるのは石炭紀です。

この時代に植物の遺体は地中でリグニンのために完全には腐らず、積み重なり、石炭に変わっていったわけです。
だから、石炭紀。

そして石炭紀の終わりには、そのリグニンを食べて分解する白色木材腐朽菌が生まれてくるわけです。
リグニンを食べられてしまうと植物遺体は石炭にはなれず、有機物となり豊かな土に変わるのです。

つまり白色腐朽菌は、私たちの家も腐らせたりしますが、農作物や豊かな森や海も育ててくれる存在なのです。
菌類の分解作用

木材腐朽菌の種類

木材腐朽菌には3種類あります。
その種類は、以下のとおりです。

広葉樹を好んで、リグニンを集中して分解。
椎茸も、この白色木材腐朽菌。

針葉樹を好んで、繊維のセルロースを集中して分解。
木が褐色になってパサパサに割れ、最後は粉末状に。

白色木材腐朽菌と褐色木材腐朽菌が活動できない高湿度の環境で活動。
木材の表面を柔らかく腐らせていく菌。
菌類の分解作用

これらの腐朽菌で、白色腐朽菌の登場があって、今の自然環境が生まれたという事なんです。
こういう凄い菌が、普通に森で生活している場面に出会えるのですから、森散歩は実に楽しいのです。

森の白色腐朽菌

こうしてみると、倒木の表面に張り付いた白い菌が、愛おしく思えますよね。
特に小さいお子さんにこういう事を伝えて、その白い不思議な生き物が、今の森や土や川や海の世界を作ってくれたんだと分かると、見える世界が変わってくると思います。

是非皆さんも、気軽な森散歩。
森が近くに無ければ、公園で構いませんので、木の下の落ち葉をひっくり返して観察してみてください。
そこに白いカビが見えたら、それは白色腐朽菌です。
菌類の分解作用
先程の写真。
この倒木の表面の白色腐朽菌。
中からきちんとリグニンを食べているのが分かります。

その証拠に、木の幹がポッキリ折れた断面がこちら。
木の中央の水や養分の通路の管(維管束)中心に白くなっています。
白色腐朽菌が大活躍しているからです。
菌類の分解作用
と言う事で本日はここまで。
最後までお読み下すってありがとうございました。
どうぞ佳き一日をお過ごしくださいませ💐😊

Ψ~ 緑の命 ~Ψ
執筆者
毎日をワクワクに変える植物教育研究家
kazuhiko
略歴
園芸の生産・流通・販売・教育と多岐にわたり都合45年勤務。
植物がもつ癒し力や、ちょっとミステリアスな植物の物語を、色んな年代の方に届けています。

現代は、デジタル時代。毎秒おしよせつづける情報に、私たちの脳は、年中無休の疲れ気味。 そこで身近な植物を使った、効果絶大わずか5分の、カンタンな心身癒しをご提案中♪
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